電動自動車(EV)の普及が進むなか、電動バイクが日本で普及しづらいのはなぜなのでしょうか。その理由や電動バイクの今後についてまとめています。
電気自動車(EV)メーカー・テスラなどの急成長からもわかるように、自動車産業は「100年に1度の大変革」といわれるほど急速な電子化が進んでいます。
国内でもいち早くEV開発を進めた日産やマツダをはじめ、ホンダやトヨタなどもEV市場に参入、さらにアウディやポルシェといった高級輸入車メーカーもEVがラインナップされるなど、自動車業界のEVシフトは既定路線といえるでしょう。
一方で二輪車については自動車に比べてまだまだ電子化が進んでいない現状があるものの、カーボンニュートラルや排ガス規制などもあって海外では電動バイク(EVスクーター)を取り扱っているメーカーも多く、大手も参入しているほど電動化にシフトしている傾向が見られます。
なかでもバイクの生産台数・販売台数ともに世界1位となっているインドでは、インド政府や州政府が電動二輪車の購入に補助金を出したり、充電施設の拡充化も図るなど、電動バイクの普及に向けた動きが活発になっています。
海外に比べて日本における電動バイクの普及がなかなか進まないなか、各バイクメーカーに衝撃を与えたのが「バイクの2035年問題」です。
バイクの2035年問題とは、2020年12月8日に東京都の小池知事が発表した「東京都で新車販売される二輪車を2035年までに非ガソリン化する」という脱炭素化に向けた取り組み内容から発生したものです。2035年以降は電動化していない新車の二輪バイクを東京で販売できなくなる、とバイク業界に波紋を呼んでいます。
ただし、バイクは構造的に電動化に不利な点も多いなどの課題もあることから、2035年までの実現は厳しいという意見も多いようです。また、電動化の技術をほとんど持っていないメーカーへの負担も大きく、ガソリンバイクを対象としたアフターパーツメーカーやバイク用品の企業が被る損害もかなりのものになると予想されます。
電動バイクが電動自動車に比べて普及しづらい理由は、EVの最大の課題とされる航続距離にあるといえます。
まず一般的なガソリン車の場合、一回の給油で400〜1,000kmほどの航続距離とされる他、ガソリンスタンドも無数にあります。加えてテスラのフラッグシップモデルである「Model S」は、米国EPA基準の航続距離で400マイル(約644km)を超えるとされています。
一方で電動バイクはというと、複数のバッテリーを使用するシステムを採用したHONDAのPCX ELECTRICで一充電あたりの航続距離で41kmと公表されています。航続距離を伸ばすには当然大容量のバッテリーを搭載する必要がありますが、それによって車両重量が増加してしまうと結局航続距離は短くなってしまいます。
このように航続距離やバッテリー容量などクリアしなければならない課題があることから、電動バイクの普及はそこまで進んでいないのです。
株式会社グローバルインフォメーションが行った市場調査レポートによると、2020年に86万1,000台だった電動スクーターおよび電動二輪車の市場規模は、2027年までに年平均成長率31.8%、594万8,000台に達すると予想されています。
電動バイク市場の成長が見込まれる要因の一つとして、石油製品の価格上昇があります。
電動バイクは車両の運用コスト削減につながることはいうまでもなく、メーカー各社はより高性能且つバッテリー交換などのメンテナンスコストが安い電動バイクの開発を進めています。
今後における電動バイク市場の課題は、充電インフラの不足が挙げられます。
特に新興国ではバイクの需要に対して充電設備が不足しているのが現状であり、メーカー独自の充電設備の増加だけでなく、国による充電インフラ開発への投資なども必要になるといえます。
ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業の4社は、電動バイク普及に向けてバッテリーの規格を共通化。排気量125cc相当までの電動バイクのバッテリーについて、4社で同じバッテリーを使えるようにしました。
ビジネス向け二輪車の電動化に向けて、二輪車「BENLY e:」三輪バイク「GYRO e:」ルーフ付き三輪バイク「GYRO CANOPY e:」という三車種の開発を進めています。
カーボンニュートラル社会の実現に向けた二輪車の電動化戦略として、「ICE系燃費改善」「電動モデルのラインナップ拡充と普及拡大」「再生可能エネルギーを動力源とするパワートレインの開発」を設定。また、電動バイクの製品投入については、まず電力の再エネ率の高い欧州などから開始し、2030年~2035年にかけてCO2排出量の多いアセアン地域に展開することで、カーボンニュートラルへの貢献を目指しています。
2012年に家庭で充電できる着脱式バッテリーを採用した電動スクーター「e-Let's」を販売。現在は燃料電池車両の先行開発を推進しており、国内・欧州等で公道実証を実施中です。また、2025年までに軽自動車規格の電気自動車を国内販売する方針を打ち出しています。電動バイクもそこに続くか今後のスズキの動きに注目です。
2021年10月6日に、日本や欧米などで販売するバイクの主要機種を2035年までにすべて電動化すると発表。電動バイクとハイブリッド車の開発を進める方針を明らかにし、2025年までに10車種以上の導入を予定しています。カーボンニュートラルの実現に向けて、電動化を推進していく見通しです。2021年10月時点では、現行モデルの電動化や新たなブランドの立ち上げなどは発表されていません。
モーターパーツの販売事業を手がける株式会社カスタムジャパンは、走行時に二酸化炭素を排出しない電動二輪車「eXs CARGO1」「eXs CARGO2」の実証実験を2022年からスタートしています。
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安定感に優れる三輪(前一輪・後二輪)の電動デリバリーバイクをつくっているメーカーは4社(2021年8月調査時点)。4社のうち、航続距離が長いリチウムイオンバッテリーを使用していて熱い日差しや雨を避けられる屋根付きのものからそれぞれ最も安いタイプをピックアップして比較しました。
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